治安関連法案 PPL Sécurité Globale の内容について

フランス各地で28日から、治安関連法案に反対する大規模なデモが行われていることは、日本までにニュースになりました。

しかし、多くのニュースは「警察官の顔の撮影を禁じる」こととデモの「暴徒化」に注目し、治安関連法案の本質があまり話されていません。

警察官に関する法案の他に、国民のプライバシーを無くす危ない内容が、今回の法案に含まれています。こちらを解決してみます。

Loi du 29 juillet 1881 sur la liberté de la presse

Source gallica.bnf.fr / BnF

PPL Securité Globale とは

「グローバルセキュリティ法案」と言われているものは、大きく4つの項目に分けられます。

  • 自治体警察の権限強化
  • 歩行者の防犯カメラの映像へのアクセス拡大
  • 無人航空機 (ドローン) による画像撮影の許可 (さらに顔認識システム搭載の防犯カメラの設置)
  • 警察官1の顔の撮影の拡散防止 (← メディアが注目しているのはここ)

この法案は政府と主要な警察組合の支持を受けていますが、ジャーナリスト協会、公の自由を擁護する国内外の団体2からは強く反対されています。

どんな問題があるのか

初めに、この法案はフランス国家警察特別介入部隊の元隊長が2020年10月20日 (日付が後ほど重要になります) に国会に提出されたという問題です。

提出から、法改正が1418件もありました。全件はさすがに書けませんので一部引用します。

なお、議論の間、法改正には「運命」が与えられます。

  • 採択 (Adopté)
  • 却下 (Rejeté)
  • 取り下げ (議論中に) (Retiré (en cours de discussion))
  • 不要 (別の法改正の採択によって) (Tombé)
  • 支持されていない (法改正の作成者が議場で擁護していない場合) (Non soutenu)
  • 受け入れられない (規則違反、違憲) (Irrecevable (contraire au règlement, anticonstitutionnel))

すでに結果が出るものは合わせて記載します。

ドローンと顔認識システムの無断使用に?

警察が使うビデオ・映像に対して、顔認証システムの搭載を求められている法改正が8件。中には街にある防犯カメラだけではなくて、公共交通機関、警察用ボディカメラ、ドローン等も含めます。

“Il parait pertinent de coupler l’œil de la vidéoprotection à une technologie de reconnaissance faciale pour offrir des gains significatifs en matière d’identification criminelle ou terroriste et d’analyse du renseignement” Source (※ 受け入れられない)

あまり話されていませんが一番問題な案法だと思います。

ドローンによる監視はテロ対策のためとしていますが、近年フランスで多発しているデモのために利用すると見られています。フランス法の比例原則に違反しています。2

猫ドローン

テロ対策の他に、「路上での嫌がらせ」と「麻薬及び向精神薬の持参・使用」を防ぐためにもドローンの利用を許可しようとしています。

いうまでもないのですが、上記の2点は常時監視の他に防ぐことができません。これをきに、ドローンの利用が原則、いつでもできるようになるということです。

警察用ボディカメラに関して、個人情報取扱いが適用されないようにしたいそうです。

話題の警察官の顔の撮影を禁じる法案

元々、「警察の活動の一環」として、警察官の顔の撮影が禁止されていました。この法改正 (※ 取り下げ)によってその一環がなくなりました。すなわち、知らないうちにビーチで水着を着ている一般人が警察だったら、訴えられる可能性があります。

もちろん、訴えるために「撮影に悪意がある」という条件がありますが、「悪意」は今のところ曖昧で、何が含まれるかは不明なところです。

悪意を持って人の写真を拡大すること (魔女狩りとか) が現在のフランス法ですでに禁止です。ですから、なぜ警察官のために特別な法が必要かが不明です。

なおさら、別の法改正 (※ 不要) には上記の「悪意」という条件を無くしたいそうです。

また、新聞では警察官の顔が常に隠されていなければなりません (参照 (※ 不要))。

別の法改正は税関 (※ 不要)、農村保安官 (※ 取り下げ) と法人の警備員 (※ 取り下げ) (鉄道の警備 (※ 取り下げ) など) を含めます。

人工知能の利用について

人工知能や AI は直接に書いてありませんが、下記の法改正があります。

« le visionnage des images peut également être assuré au moyen de technologies de vision par ordinateur sans intervention humaine » Source (※ 却下)

「人の手を介さずに、コンピュータビジョン技術を使って画像を見ることもできます。」

「コンピュータビジョン技術」はただの顔認識システムに過ぎないかもしれませんが、どう解釈するかによります。

ちょっとワケ分からない法も

その他は全体的にくだらない法改正だらけです。

一つはに警察官が銃を使う場合、原則は正当防衛になります (※ 受け入れられない)。濫用とは。

ジョン・ウェイン

他にすべての警官に銃の持参を常時許可する、等といったカウボーイ的な法改正がいくつかあって書ききれません。

悪いタイミングに警察による団体暴行

そんな法案が提出されてから一ヶ月、11月21日に警察官が黒人男性を集団暴行した動画が SNS で拡散しました。警察や法案に対する反発が急激に強まったことはおかしくないでしょう。

閲覧注意

この法案はどうなるのか?

揉めることを予想して、政府は「ファスト・トラック」 (迅速な手続き) を使って、国会での議論を省略できます。

但し、2021年1月中に元老院にて議論されます。そこで24項 (警察官の顔の撮影を禁じる法案) が書き直されると思われます。

そもそもこのまま24項は憲法評議会を絶対に通らないでしょう。


幸いなことに法案の改正1418件全件がそのまま法律になるわけではないし、殆どは却下になりましたが、このような改正が提出される事自体は、提出者(あるいは政党) の考え、影響力、戦略、立場などを示していると思います。

状況が素早く変わるし、本稿を公開したらすでに情報が古い可能性がありますが、なぜフランス人が (また) デモしているかを、もっとまともに説明したかったです。

自由なる人々よ、この言葉を忘れるな。我々は自由を得るかも知れない、しかし一度それが失われると取り戻す事はできぬ。 —ジャン=ジャック・ルソー

最後に、警察の保護を否定しているわけではありません。テロ事件が発生しているフランスで、警察はよく狙われているため、比例した保護が必要なのは当然です。

しかし、今回の法案はあまりにも「対テロ」ではなくて、「対自由」というふうに多くのフランス人が受けとったでしょう。

なおさら、警察の過失が多発している、かつ、ほとんどの過失に対する告訴が棄却になっている3ため、その過失を隠しやすくするための法案が提案されるのは、フランス人のような、熱い国民が反発しておかしくないでしょう。


  1. 警察、市警、司法警察、農村保安官まで含める。 フランスの警察
  2. 国際連合人権理事会 (PDF) にも叱られた。
  3. 警察の過失の調査は「警察の警察」と言われている局によって行われており、10年以上前から独立性と公平性が問われている。人権連盟は2019年から同局への信憑性がもうなくて、解散を求めている。