System76 社 Galago Pro のレビュー
いよいよ久々の更新です!
ちょうど一年前くらいに米国 System76 社の Galago Pro を手に入れましたので、レビューしようと思います。
前提・前書き
大学時代から使ってた MacBook Pro Late 2011 年は開発と仮想環境の構築にもう追いついてなくなったので、新しいノートパソコンを探し始めました。
最近、パソコンは主に開発とその他のネットワークやセキュリティの勉強のために使うので、 Linux 標準搭載のパソコンを試してみたかったです。また、当時 MacBook Pro と macOS は問題に関するニュースばかりで、そんなの買いたくなかったです。最近はよくなったと聞いています。
Linux のデスクトップを日常に使うのは13、14年?ぶりです。故 Ubuntu ShipIt を使って Ubuntu と Kubuntu の CD を送ってもらって家族と共有のパソコンにインストールしてました。
当時はまあまあ大変でしたね。スリープモードから戻ってこなかったり、インターネットが使えなくなったりするのはしょっちゅうありました。その後は Windows、そして大学時代からずっと macOS を使ってきました。
パソコン探しの話に戻りますが、最初はプライバシー擁護派の間で高く評価されている Librem 社の Purism 13 を検討しました。
残念ながら、当時販売していたものは約5年前の CPU 搭載の10万円を超えるノートパソコンで、カスタマイズ(RAM の追加など)とシッピングを足したら、バカにならない値段でした。
いくら彼らのミッションを支えたくてもちょっと無理がありましたね。
一般なノートパソコンを買って Windows を削除して Linux を入れることを考えましたが、 ThinkPad など、 Linux に優しいと言われるものでも、あれもこれも設定をいじらないと動作しないという口コミを読んで諦めました1。
2番目ベストな選択がないかを調べて、米国の System76 社に出会いました。同社はサーバを販売したり、 Pop!_OS を開発したり(社員はアップストリームに貢献したり)、 Linux 標準搭載のノートパソコンとデスクトップパソコンを販売しています。
数週間ぐずぐずして悩んで 13"/14" の Galago Pro にしました2。
シッピング
購入前に、営業に複数質問をしましたが、時差を除いて素早く(24時間以内)、かつ、丁寧に答えてくれました。
また、ノートパソコンを組み立ててくれる直前に画面サイズの変更をリクエストしたら問題なく応えてくれました(組み立てた後はさすがに無理だと思います)。
もうひとつ、シッピング前に電話をしてくれて、これからのシッピングとパッケージの追跡方法、税金関連(あれ?そんなあったっけw)など、丁寧に説明してくれました。 たまたま運が良かったのだけかもしれませんが、12時間差もあるにも関わらず夜中に電話してこなかったです。海外のサービスだとけっこう忘れがちなものなのでナイスだと思いました。
なかなかの良いカスタマーサービスです。
数日間待って着払いで税金3を払ってやっと届きました!
想像していたよりラッピングボックスが大きかったです! 無駄にデカいと思いつつ、17"のノートパソコンもあれで輸送しているだろうと思い納得しました。
感謝の手紙とステッカーもついていました。
ハードウェア ノートパソコン本体について
Galago Pro の本体は Clevo N130BU4 です。 OEM なら直接買えと一部のユーザによって炎上しましたが、僕は気にしません。確かに直接に買った方がお得ですが、 System76 はその本体にファームウェアの設定や OS のインストールと設定等といったプラスアルファの価値をつけました。
本体自体は普通です。近くから見ると、色々気になることがあります。 触ると分かりますが、ちょっと安っぽいプラスチックです。はみ出している部分があります。そして CPU がフル稼働の時は熱くなってしまいます。
カバーは片手で開けません。 MacBook Pro は当たり前で考えたことすらなかったですが、片手でノートパソコンのカバーが開けないのすごく不便です。習慣で何回かやっちまって本体全体をもっていって落としそうになりました。
キーボード配列は・・・不思議?だけど慣れました。今になって Home, PgUp, PgDn, End が近くて便利です。 Esc キーは小さすぎると感じています。よくその下の ~ キーを代わりに押下してしまいます。 Vim で何回かやらかしました。 Fn キーは最近よくあるコントロールです。タッチパッドの無効化・有効化と画面拡張の設定が Fn でできるので、便利です。
そういえば、タッチパッドも悪くないです。さすがにさわりごこちは Apple 製品ほどスムーズではありませんが、他のノートパソコンよりは良い感じに操作できます。
ポートは USB 3.1 Type-C (Thunderbolt 3)、 2 × USB 3.1 Type-A, SD カードリーダー, HDMI, MiniDP, Gigabit, マイクとイヤホン Jack 。これは MacBook に比べてとても充実しています。
一点だけとても残念なのは、左側に利用できない (マザーボード側になにもない) SIM カード用ポートがあります。せめて何かで埋めてほしかったです。 間違って SD カードをそこに挿入して本体を分解して取りに行かないといけないことがありえる状況と言っていないが、数ヶ月前、間違って SD カードをそこに挿入して本体を分解して取りに行かないといけなかったです。
それぞれ意味を持つ4つの LED があります。本体をひっくり返さないと何を意味するかが分からない (下にアイコンがある) ので基本的になぜ光っているかは分かりません (覚えてカスって話だが)。
本体は分解しやすいです。説明書もありますのでとても簡単にパーツを変えられます。
普段気になることですが、ちょっとした CPU を使う作業でファンがすぐフル稼働で動きます。煩いです。
Galago Pro は2.5インチ SATA ドライブベイを搭載しています。これは、拡張性のために素晴らしいですが、それはラップトップ内のスペースの多くを取ります。その SATA ベイを削除し、バッテリーのためのスペースを使用していたら、電池の寿命を倍増させることができたでしょう。とはいえ、バックライトを下げれば4, 5時間行けると思います。
ウェブカメラに付箋をはって使ってません。
ソフトウェア Pop!_OS について
(書きにくいので以下 PopOS)
インストールは簡単でした。初期設定は macOS に近い体験です。ディスクの暗号化が既存設定であることも嬉しいです。使いませんでしたが、設定時に Google や NextCloud のアカウント登録ができます。
良かった点
すべての機能が動きます!驚くこと自体が悲しいですが、 Linux デスクトップではまだまだ珍しいことです。
よく問題になる WiFi は 2.4Ghz も 5Ghz も問題なく接続できました。 Bluetooth も問題なさそうですが、あまり使わないのでなんともいえません。
この間モニターを買ってちゃんと認識されるか心配でしたが、 DisplayPort で問題ありません!
OS は素晴らしいです。 PopOS はカスタマイズされた GNOME シェルと初期設定や初期アプリを入れた Ubuntu です。近年話題になった Ubuntu の追跡機能は PopOS に見かけない点も望ましい変更です。 PopOS はカスタムの Linux 5.4 カーネルを使っていますが、 Ubuntu との詳細な違いは確認していません。
標準のテーマは Adwaita を元にした、ライトとダークなテーマです。とてもしまっている感があります。
Pop!_Shop は Elementary OS の AppCenter のフォークです (System76 の開発者には Elementary OS の開発者と貢献者がいます)。僕はコマンドの方が好きなので滅多に開きませんが使う人には便利でしょう。
また、この OS は Linux でゲームするために優れていると言われています。残念ながら僕が持っている Galago Pro の CPU がほとんどのゲームに耐えられないのであまりテストできていません。
System76 は Nvidia パーツに必要な libvulkan1
ドライバーを Steam のインストーラに入れておきましたので Steam をインストールするだけでゲームができる(はず)です。
当時買ったときは 19.10 が入っていましたが、今年から 20.04 が出てきて、さらに使いやすくなりました。一番の変更点は Pop Shell というタイル型ウィンドウマネージャ (WM) です。この WM は i3 とかと違って、どちらかというと初心者向けの WM です。覚えるのは一瞬で、複雑な設定がありません。それでもいちいちウィンドの位置をマウスで動かすより大変便利です。アプリケーションランチャーもあってどこでもから簡単にコマンドを直接打つことができます。
Pop Shell の他に、ファームウェアの自動更新と新しい「refresh OS」のリカバリーオプションがあります。このオプションは $HOME
だけを残してシステムを再度インストールできます5。
Pop!_Shop に、 Debian 系標準の DEB パッケージでインストールする方法の他に、 Flatpak からインストールすることも可能になりました。
Ubuntu コミュニティで炎上した Snap は標準で入っていません (入れることはもちろん可能です)。
結論、 Arch で何でもかんでも細かく設定したい人には向いていませんが、 Linux デスクトップを使ってみたい人や、怪しげなウェブサイトからカスタムなカーネルをダウンロードして自分で構築したくない人 (起動して動く!) にはとても良いディストリビューションです。
であったバグ・不便なこと
優れた OS でも、気になったことがあります。
まず、不要だと思う標準アプリケーション (ソフトウェアっていつから言わなくなった?) は PopOS を削除しないとアンインストールできません。 19.10 で、 apt purge hogepiyo
を打って気づいたら pop-desktop
も消された! となっていました。幸いなことに 20.04 で状況が改善され、危ないことをしそうになると警告がでます。
Reading package lists... Done
Building dependency tree
Reading state information... Done
The following packages will be REMOVED:
pop-default-settings* pop-desktop*
WARNING: The following essential packages will be removed.
This should NOT be done unless you know exactly what you are doing!
pop-desktop pop-default-settings (due to pop-desktop)
0 upgraded, 0 newly installed, 2 to remove and 0 not upgraded.
After this operation, 158 kB disk space will be freed.
You are about to do something potentially harmful.
To continue type in the phrase 'Yes, do as I say!'
?]
また、 19.10 で Ethernet ケーブルをさしたままパソコンを起動すると、 NetworkManager は RJ45 を読めませんでした。調べたら Ubuntu Mint にもあったようですのでアップストリームの問題でしょう。とりあえず 20.04 で直りました!
バグは滅多にありません。 Pop Shell はたまに反応が遅いですが、数秒を待てば戻ってきます。
起動後画面が黒いままは数回ありました。まぁこれはほとんど自分のせいでしたw
日本語入力システムをインストールするのは割りと面倒くさかったです。 PopOS の問題というより Linux 不慣れの問題でしょう。
でも一番な致命的なのはスクリーンセーバーによるバグです。通常はすぐに起動しますが、たまに30秒ほどかかることがあります。 syslog
を見ると、カーネルが CPU の電源を切る前にすべての処理を片付け終わっていないことがあるように見え、再び起動したときには、再起動するはずなのに数秒の間、片付けていない処理を一時停止しようとします。何回か起きるとむかつきます。
サポート
ポジティブに終わりたいのでサポートについて書きます! 先ほどシッピングでも言いましたが、サポートはとても丁寧でとても役立ちます! この間、 WiFi が動かなくなってサポートに連絡したら、すぐに問題点と解決方法を教えてくれました。 それに、壊れた WiFi のカードは送ってもらうことができましたが、輸送が大変高いため品番を教えてくれて「日本で買っといて」とアドバイスしてくれました6。
結論
批判的なレビューに見えてしまうかもしれませんが、僕は正直に述べて、 Linux の世界に飛び込もうと考えている人のための助けになればと思いました。また、1つの欠陥に対して、それを上回る良さが2, 3あると言え、総合的には優れています。
それは奇妙な小さなラップトップで、僕はそれを愛用しています。
楽しそうではあるが、今回は起動してすぐに使えるノートパソコンが条件でした。 ↩︎
購入時は galp3 (Galago Pro ver. 3) でした。 Coreboot がないことと、スペックが多少違いますがだいたい同じです。 ↩︎
完全に忘れていた税金とシッピングで予算オーバーしてしまいましたw ↩︎
Clevo のサイトは最低限の TLS 1.2 を対応しないので僕はサイトにアクセスしていませんが、こちらで確認できるそうです。 ↩︎
20.04 の新機能かどうか分かりませんが、
pop-upgrade recovery upgrade
でリカバリーパーティションをアップデートすることができる便利コマンドです。 ↩︎それに、日本で買うと合法の技適マークで安心です。 ↩︎